2014年:年間テーマ「モンゴル法」趣旨説明

投稿者: | 29/05/2014

モンゴルはソ連に次ぐ世界で2番目の社会主義国として知られ、その社会主義は「草原の革命」や「牧民の革命」と呼ばれたように、他の社会主義国とは全く異質のものとして注目されてきた。

しかし、1989年に東欧革命の影響を受けた民主化運動がモンゴルで開始されると、翌1990年には社会主義計画経済を放棄するとともに複数政党制を導入する体制改革が始まり、1996年には選挙による政権交代を実現するなど、その社会体制は大きな変容を遂げた。その一方で、牧畜協同組合と国営農場の解体を中核とする急激な市場経済化は迷走し、1990年代から2000年代前半にかけて大きな社会的混乱をもたらした。

近年では鉱物資源開発による経済発展で世界有数の経済成長率を示しているが、その一方で社会的格差の拡大や環境汚染といった負の側面も目立ち、環境保護のための市民運動と外資に批判的なナショナリストグループが結びつくなど、新たな動きも出ている。

そのようなモンゴルにおけるポスト社会主義の法と社会の変容について、未だに本格的な分析が行われているとは言えず、他のアジアの社会主義国との比較も十分ではない。1980年代にイギリスで刊行されたW. E. ButlarのMongolian Legal Sysytem (1982)とA. J. SandearsのMongolia: Politics, Economics and Society (1987)を最後に、モンゴルの法と社会に関する信頼できる研究書は近年では刊行されておらず、経済成長に伴って再び注目されつつあるモンゴルの法と社会に関する体系的な分析が求められている。

2014年はモンゴル人民共和国の成立から90周年、そして1989年の民主化運動開始から25周年という節目でもあり、モンゴルの法と社会に関するこれまでの研究成果を総括し、今後の課題を再検討するべき時期に来ていると考える。そこで、アジア法学会の2014年度の年間テーマとしてモンゴル法を取り上げ、モンゴルの法と社会に関する体系的な分析を試みたい。

2014年6月21日の学術集会(名古屋経済大学にて)では、「モンゴルにおける市場経済化と法改革の展開」を主題として、モンゴルにおける民法・会社法・労働法の改革の現状と課題について検討する。また、2014年11月22日・23日の学術集会(西南学院大学にて)では、(1)市場経済化後の土地・環境をめぐる紛争処理を素材としてモンゴルの行政と市民社会の変容、および(2)前近代から近現代にいたるモンゴルの法と社会の断絶と連続性について検討する。本企画を通して、モンゴル法研究の現状と今後の課題を示すとともに、他のアジア諸国と比較研究する上での手がかりを提供したい。

以上